(ひきとり新聞第11号のニュースを順にテキストで紹介していきます。)
『太陽の子(角川文庫)』灰谷 健次郎著、KADOKAWA、1998年、792円
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神戸にある沖縄料理屋『てだのふあ・おきなわ亭』に集う人たちの人生を小学生のふうちゃんの純粋な心を介して紐解いていく物語。沖縄とそれ以外の日本との間にある構造的な差別や不平等が登場人物の生と一緒にあぶりだされています。
てだのふあ・おきなわ亭の人たちと触れ合うことで自分自身の生をみつめたキヨシ少年が言っています。「日本は沖縄の心にふれて、だんだんまともになっていくのとちがうやろか。そやなかったら日本は死ぬだけや。」
太陽のような明るい未来への象徴ともいえる、こどもの生に、戦争という暗闇で散っていった命。沖縄戦や原爆で深い苦痛、悲しみを負った人たちの生を対比させていくことで、生と死、過去と未来を対極ではなく、連なり合う一つのものだと伝えてくれています。自分の生がどれほど沢山の人の悲しみの果てにあるのかを思うことで、本当の平和について考えたふうちゃんの心は、今を生きる私たちにも必要な心なのではないでしょうか。
(菊地・PITOPE)
※評者の菊地さんを紹介した記事です。
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