『太陽の棘』 (文春文庫) 原田 マハ著、
文藝春秋、2016年、704円
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実在の画家や作品をモチーフとした「アート小説」でおなじみ原田マハが描くアメリカ統治下の沖縄。語り部は戦後沖縄に派遣されたアメリカ従軍医。彼は休日ドライブ中にたまたま芸術村を発見し、画家のタイラとその仲間たちに出会う。その後油絵が趣味だったこともあり、休日ごとにその村に入り浸るようになる。アートを介しての交流は支配者と占領下の現地民という関係性を希薄にしていった。
好きな部分を3点。1つ目は戦後沖縄にニシムイ・アート・ヴィレッジという芸術村があり、素晴らしい画家たちが活動していたということ。ぜひ彼らの作品を直に見てみたいと思う。2つ目は「沖縄」の複雑さについての描写。画家たちを含む登場人物の一人一人について、戦争や国策に翻弄されたそれぞれの背景を繊細に描くことで「沖縄」はひとくくりでは語れないことがわかる。3つ目は巻末の解説(文庫のみ)。「本土」の原田マハが表現できない部分を、「沖縄」の佐藤優にたくしている。ぜひ最後まで読んでほしい。(つちふまず)
(ひきとり新聞第12号のニュースを順にテキストで紹介していきます。)
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