『沖縄とセクシュアリティの社会学:ポストコロニアル・フェミニズムから問い直す沖縄戦・米軍基地・観光』 玉城 福子著、人文書院、2022年、4,950円
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沖縄と性はどう描かれてきたか?
ポストコロニアリズムとフェミニズムを社会学的な実証研究によってむすび、新たな地図を描こうとする意欲作。ポストコロニアル・フェミニズムの観点に立ちながら、沖縄戦や戦後の性暴力、売買春に関わる言説を再検討している。
第一部では理論的整理と問題設定、第二部では女性国際戦犯法廷、自治体史誌、沖縄平和祈念資料館改ざん事件など、沖縄の歴史におけるセクシュアリティの扱われ方を丹念に追い、第三部では在沖米軍基地と性暴力事件の表象、歓楽街の環境浄化運動の分析をとおし、時間を現代に引き寄せながら考察を深めていく。
通底するのは、植民地主義と性差別主義が沖縄という植民地において分かちがたくむすびつき、発露し、売春女性や性暴力被害女性たちの排除と利用を繰り返してきた事実に対する著者の静かな怒りである。
固定化された思考の枠組みからなかなか抜け出すことができない私たちにとって刺激的な一冊となっている。(里村)
(ひきとり新聞第13号のニュースを順にテキストで紹介していきます。)
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