(ひきとり新聞最新号のニュースを順にテキストで紹介していきます。)
『宝島』
真藤順丈著、講談社、2018年1,980円
* *
第160回直木賞受賞作品!戦後沖縄を舞台としたスーパーエンターテイメント!なんて、陳腐にきこえるかもしれないが、まさにそんな作品。
舞台は沖縄、終戦直後から始まった米軍統治下から日本に復帰するころまでの物語。主人公は当時の米軍基地に忍び込んでは住民のために物資を奪っていた「戦果アギヤー」とよばれる子供たち。そのリーダーの「オンちゃん」はある夜、基地で行方不明になってしまう。その謎も解けぬまま子供たちはそれぞれ大人になっていく。
きれいな海とまぶしい青春模様の背景には戦後累々と起こった沖縄での事件事故があらわれ、読者は主人公を通じてそれらを経験する。米兵による犯罪、軍ジェット機墜落事故、反米運動・・・映画で見た沖縄の英雄も登場する。フィクションとノンフィクションがうまくからまり、戦後沖縄史をスリリングになぞることができた。
そしてついに「オンちゃん」の秘密が明かされる。そう、この本はミステリーでもあったのだ。(つちふまず)
(ひきとり新聞10号・ひきトリの本棚3より)
0コメント